民族藝術学会誌 arts/ |vol.36

¥5,500

民族藝術学会 編集・発行
B5判/182×257mm/262頁
並製くるみ表紙/表紙デボス加工/2020年
AD+D+DTP:松本久木+DTP:納谷衣美
ISBN 978-4-910067-01-8



『民族藝術学会誌 arts/ 』は、35巻の刊行を重ねた学会誌『民族藝術』をリニューアルしたものです。
地域と時代、そして領域を超えて存在する、「複数形」のさまざまな“arts”。
あるいは、“arts”の枠をも超える、何か。
『民族藝術学会誌 arts/ 』は、それらを探究する学術誌です。

『民族藝術学会誌 arts/ 』創刊の辞

このたび、民族藝術学会では、学会誌の名称を、アートをより縦横に語りあえる場にふさわしいものとすることをめざして、これまでの『民族藝術』から、「民族藝術学会誌」と併記しつつ、新たなタイトルに変更することといたしました。また、分野を超えた議論の場をさらに開くため、雑誌の形態も一新することにいたしました。
新しい学会誌のタイトルとして選んだのは、『民族藝術学会誌 arts/ 』。小文字で複数形のartsにスラッシュがついていて、そのあとが空白になっています。これまで、私たちが広い意味での“arts”、つまり技術を含めて芸術と呼んできたものと、そのalternative、 つまり、それに変わる、それを超えて、より広範な人間の創造的な営みをさすにふさわしい語彙。私たちははまだ、それがなにかを手にしていません。それを探すアカデミックな営みを示すものとして、やや挑戦的なこのタイトルを選びました。

民族藝術学会は、1984年4月に発足しました。そこでいう民族芸術学は、既成の学問の枠組みを超え、人類の普遍的な営みとしての芸術現象を考究する学として構想されました。
人類の生みだすアートをめぐっては、これまで、主として西洋とその影響下で成立した事象を芸術学や美術史学が研究の対象とし、それ以外の地域の事象、つまり、非西洋の事象を人類学・民族学が研究対象としてきたといった傾向がみられました。このため、この両者の研究は、久しく別々の道を歩いてきた観があります。ところが、今、この二つの分野は急速に接近しつつあります。
人類学・民族学にとっても芸術学にとっても、問題系を共有するなかで、分野の別を超えた新たな知の領域が開けてきているといってよいでしょう。まさに民族芸術学が必要とされる沃野が広がってきたということができるだろうと思います。
一方で、この「民族芸術」という言葉自体が使われることは、研究者の間ではほぼなくなってきているというのが実情です。民族藝術学会が学会誌『民族藝術』の英語名称として用いてきた“ethno-arts”という用語も、現在では、世界の先住民族の芸術をさす語として一部で用いられるにすぎません。そのようななかで、「民族芸術」という語を用いた途端、「芸術」とは別に「民族芸術」というカテゴリーがあるかのようにうけとられ、逆に既成の枠組みを超えて芸術を縦横に語ることが難しくなるという状況が、今、生まれてきているといえます。
新たな学会誌の名称は、こうした状況を打開するために考案されたものです。また、この名称の変更にあわせて、ここで述べたような「学」としての視座を明瞭に示すために、これまで曖昧なままにおかれてきた学会の英語名称を、“Society for Arts and Anthropology” とすることにいたしました。

“ 民族藝術学会とその学会誌を、既成の学問分野や活動の領域を超え、人類の普遍的な営みとしての芸術現象を立場を異にする研究者やアーティストが共に考究する開かれた場として再創造しよう、というのが、この改革の目的です。
新たな学会誌には、各号で特定のテーマを掲げて論を展開する「特集」、広く人類の芸術現象を実証的に考究する「論文」のほか、「報告」という、アーティスト、学芸員、研究者など、多様なバック・グラウンドをもつ筆者の実践についての議論を幅広く収載する枠を設けました。芸術に関わる多くの方がたの積極的なご投稿をお待ちしています。

世界は今、新型コロナウィルスの感染拡大という未曾有の危機に直面しています。そのような状況の中であればこそ、今、人類にとって芸術とは何かが問われています。新たな形を整えた『民族藝術学会誌 arts/ 』への、皆さまのご支援、ご協力を、心からお願い申し上げます。

2020年3月
民族藝術学会 会長 吉田憲司 ”

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内容

特集1:「arts“/”」の問題圏

伊東信宏|「ポップフォーク」の展開
後小路雅弘|アジアのモダン・アート
竹内幸絵|「arts/design」──その境界の史的変遷と溶解について
柳沢史明|「ニグロ芸術」から考える「黒人芸術」
上羽陽子|はじめにヒモありき──「線具」から民族技術を問い直す
中尾 薫|「伝統芸能」再考
緒方しらべ|同時代のアフリカ社会とアート
服部 正|障害者の芸術活動の今日的課題
日髙真吾|災害と地域文化──研究者が果たす役割
伊藤敦規|共有されるアートをめぐる記憶
青嶋 絢|サイトスペシフィックな音楽/音の表現──場と音を接続する
シンポジウム:《Cosmo-Eggs│宇宙の卵》
(ヴェネツィア・ビエンナーレ2019日本館)

アートと人類学の交点から考える

下道基行・石倉敏明・川瀬 慈・中村史子/吉田憲司・岡田裕成

特集2:民族藝術と「地域」

濱田琢司|特集にあたって
櫻井弘人|遠山霜月祭の変容と御霊信仰──時代に応えた祭りの変化
佐々木重洋|鎮めをおこなうサカキサマ──奥三河、花祭の榊鬼と地域性再考
濱田琢司|創作の工芸と地域性──農民美術の継承をめぐって

[論文]
久野はるな|1850年代における絵画複製写真の再考──写真家ギュスタヴ・ルグレイの実践を中心に
久岡加枝|高知県西部における「花取踊」の成立過程と神事芸能化をめぐる一考察──棒振踊の伝播と室町期における法楽和歌の受容と関連して
冨依美音|近現代沖縄陶器における創作意識の発現と「本土」からの影響に関する歴史的考察──金城次郎の「魚文」の変遷を例に

[報告]
飯田玲子|欲望を演じる人々の現在──インド・マハーラーシュトラ州の大衆芸能タマーシャー
岡田恵美|八重山諸島・黒島の正月綱引き「世引き(ユーピキ)」──ローカリティの再生と歌の伝承問題を考える
岡本弘毅|「怖い絵」展の功罪
堤 展子|陶芸の多様性──現代陶芸家自身の実践
福田新之助|1989年までの私自身の武者修行

[評論]
加藤義夫|関西ニュー・ウェイブの80年代美術と中西學
小林純子|「民芸」の地方からの見直し──民芸と壺屋焼
堀切正人|地方美術館におけるアーカイヴ活動の現状
山本真紗子|北野天満宮 信仰と名宝と新たな魅力
佐藤真実子|「選ばない」キュレーション──アウトサイダー・キュレーターの選択
乾 淑子|再現展示
中塚宏行|陶彫の40年─堀野利久1978–2019──変幻自在、融通無碍、無作為の作為の戯れから生まれた陶の象
鈴木慈子|流れに触れる
一柳智子|鄙に咲く夢の芸能舞台──南山御蔵入領の人々
不動美里|絵画を問う二人の画家の軌跡を巡って──作品の消去と不在が示唆すること
金谷美和|未知で理解しがたいものを表現すること
齋藤 桂|映画『メタリカ&サンフランシスコ交響楽団:S&M2』
学会の活動と概要

大久保恭子|第15回 木村重信民族藝術学会賞
柳沢史明著『〈ニグロ芸術〉の思想文化史─フランス美術界からネグリチュードへ

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